満願 米澤穂信 感想 ネタバレ おしいとこでずれている主人公たち
面白かった!!!
オススメ!!!
短編集だけど、
主人公たちがどれも「おしい」んだよね。
良い意味で。
どんな風に「おしい」のかと言えば、
あのー、
良いスピーチだったのに最後の一言でよけいなこと言って
場を微妙な空気にさせる
とか
せっかく夕飯にごちそう作ったけど、
相手は昼間に同じものでもっと高級なもの食べてたとか
そういうおしさ。
残念さ?
なんかさ、普通の作品ならそのまま
「悲劇的な主人公」
「カッコ良い主人公」
でいられたんだろうけど、ちょっと違うよ、みたいな展開。
●夜警
こういう展開ね~~~!!
ありそうでなかったやつじゃない?
この、
正義のヒーローだったのが
とんだ小悪党だったという話。
その、「悪党」と呼ばれる場合でも
「華がある」悪党とか「同情できる」悪党もいるけど、
この夜警に出てくるのはほんと~にしょ~もない奴。
同情もできない。
でも、こういう人いるし、
私にも当てはまるし、
私が警察官になってたらこうなってたかもしれない。
いや~お兄さんは
弟さんのことよく分かっていらっしゃる。
感動的な結末が、
とんだ「な、なんだってー」みたいな展開だよ。
でもさー人間ってこういうもんだよね。
善人を殺さなかっただけマシだよ。
善人を殺す前に自分が死んじゃって良かったかもしれない。
ある意味ハッピーエンドな終わり方。
好きです。
●死人宿
なるほどなるほど!
いや~これも面白い!
遺書の持ち主が見つかってからの~
女性の死。
お前が本命かーい!
いや~人生ってこういうものだよね。
救える命もあれば、救えない命もある。
いや、「救える」とかじゃないよね。
そういう運命だったんだと思う。
運命なら絶対誰かに助けられるし、
そうでなかったら誰がいようと助からない。
特に自殺はね。
そういうもんだよね~。
●柘榴(ざくろ)
ざくろって読めなくて、
途中までずっと「たくどめ」と読んでいた。
ルビつけてよ!
魔性の女ならぬ、魔性の男の話。
これ男女逆ならけっこ~あるあるじゃない?
男がこういう役は珍しいかも。
いや~モテル男は怖い。
娘に手を出しちゃってるけど、
魔性過ぎて別に嫌悪感も湧かない。
あっ(察し)みたいな感じ。
いずれこの姉妹は骨肉の争いを繰り広げるんだろう。
月子が傷の意味を知った時が怖い。
●万灯
う~~~~ん、この場合、
殺しちゃダメでしょうね。
恨みとかなら仕方ないかもしれないけど、
相手には非がないからね。
でも、面白い詰めより方だと思った。
警察に殺人容疑がかけられているんじゃなくて、
感染源の近くにいた人として探されるなんて。
「森下、よけいなことしてくれたな!」って感じだよね。
まーこういう場合殺しちゃいけないよね。
●関守
怖いですな~~~!!
きっと主人公はあの後死んだんでしょうね。
崖から落ちたとかで。
2回も悪い男にひっかかる娘が悪いと言えば悪いけど。
ばあさんはあそこでずーっと秘密を守り続けているんだねえ。
●満願
この作品だけ、オチがよく分からなかった。
結局、計画的殺人ということだったんだよね?
主人公は妙子を
「亭主を守ろうとした悲劇的なおばあさん」として見ていたけど、
実際は「掛け軸をとられまいと鮮やかなトリックを使って自分をも騙したばばあ」
だったみたいなこと?
いや~でも妙子さんはそれで良いと思うよ。
あんなひどい亭主のことをずっと慕い続けている妻なんてどうかしてる。
主人公、というか男はそういう幻想があるのかな?
男に健気に尽くす女、みたいな。
女性もあるよね、
女性に王子様のように尽くしてくれる男が理想、みたいな。
西野カナの「とりせつ」みたいにさ。
あんなん、
男からしたら「ふざけんな!」って思っちゃうよね。
やっぱ結婚後相手に尽くすかは相手次第だよ。
相手が自分を大事にしてくれたら
自分も大事にするし、
自分は大事にしてても相手が大事にしてくれなかったら
「死ねや」っておもうし。
妙子さん、離婚すれば良かったのに。
ズルズル付き合ってたから、殺人犯になっちゃった的な。
いや~~~面白かった!
なんていうかさ、このミステリー集って、
「探偵役が探偵+謎解きする「だけ」」
みたいな感じ。
あのーコナンとかだと、謎解き→犯人説得、逮捕、自殺を止める
みたいなのがあるけど、
これらの短編集の主人公たちは、謎は解明するけど、
だから犯人を救うかと言えばそうではない。
中には謎解きしてそのままあっさり殺されている人もいるし、
自殺をそのまま見過ごしている人もいる。
探偵役がノーアクティブだと、
こういう展開になるのか~って感じ。
探偵役ってずいずいつっこんでいくじゃん?
その持ち前の行動力で人を救ったりするじゃん?
その、謎解きするまでの行動力はあるんだけど、
その先の力は特にない、みたいな。
うーん、面白い!
おわり。